都城でデジタル化支援をしていると、私はこの違和感に何度もぶつかります。外に払うお金には慎重でも、社内で毎月積み上がる残業、確認の手間、社員の負担には、思った以上に無頓着な会社が少なくないからです。
今、会社を続けるうえで本当に考えなければいけないのは、「今日も回っているか」ではなく、「この先も回し続けられる形になっているか」ではないでしょうか。
- 黒字でも、引き継げなければ会社は止まる
- 外に払う費用だけでなく、社内で積み上がる残業代や手間も立派なコスト
- デジタル化の本質は、ツール導入ではなく「引き継げる仕事の形」をつくること
宮崎では、黒字でも会社が消えていく現実が起きています
まず、直視しなければならない数字があります。
帝国データバンク宮崎支店の調査によると、2024年に宮崎県で休廃業・解散した企業は602件で、過去10年で最多でした。そのうち、直前期の決算が黒字だった企業は42.4%。さらに、休廃業した企業の経営者平均年齢は71.4歳で、地域別では宮崎市に次いで都城市が2番目でした。
つまり今、宮崎では「赤字だから会社が終わる」のではなく、利益が出ていても、続けられずに終わっていく会社が少なくありません。
引き継げない会社は、黒字でも止まります
なぜ、利益が出ているのに会社をたたまなければならないのか。その背景にあるのは、お金の不足だけではありません。
社長の頭の中にある判断基準。ベテランだけが知っている仕事の流れ。紙を見ないと分からない情報。担当者に聞かないと前に進まない業務。こうした状態が整理されないまま時間が過ぎると、会社は「今は回っている」ように見えても、次の人に渡せる形にはなりません。
休廃業した企業の経営者平均年齢が71.4歳だったという数字は、年齢そのものを責める話ではなく、引き継げる形に整えないまま時間が過ぎることの重さを考えさせる数字だと思います。
外に払うお金だけを「高い」と見ていませんか
現場でご相談を受けていると、「月に数万円のツール代は高い」「外注するとお金がかかる」という話はよく出ます。
もちろん、支出に慎重になること自体は大切です。ただ、その一方で社内では、毎日のように残業が発生し、同じ確認を何度も繰り返し、人が頑張ることで何とか回している。そういう現場も少なくありません。
社外に払う費用だけがコストで、社内で積み上がる残業代や管理の手間は、見なくてよいのでしょうか。実際には、外にお金が出るか、社内で人件費や負担として積み上がるかの違いでしかありません。どちらも会社にとっては、れっきとした費用です。
しかも、社内で無理を続けるやり方は、残業代だけでは終わりません。社員の疲弊、採用のしづらさ、定着の難しさ、引き継ぎのしにくさまで含めて、あとから大きな負担になって返ってきます。
ここで参考になるのが、中小企業庁の「中小企業白書」です。白書では、IT投資を売上高比で見た分析が行われており、売上高の2%以上をIT投資している企業は手元流動性の水準が最も高く、投資比率が高い企業ほど業務効率化や競争力強化を実感している傾向が示されています。
一方で、売上高1%未満の小さなIT投資でも、競争力強化に効果を感じている企業は6割以上ありました。大切なのは、多額の投資を一気に行うことではありません。まずは、自社が売上に対してどの程度をITや業務改善に回しているのかを把握し、その水準があまりにも低すぎないかを見直すことです。
「最後は人なんだから」で、止まっていないか
地域の経営者の方と話していると、「最後は人なんだから」という言葉を聞くことがあります。私も、人が大事だという考えには賛成です。現場を支えているのは、いつだって人です。
ただ、その言葉を、今のやり方を見直さない理由にしてしまっていないでしょうか。
人を大切にするというのは、人に余計な転記をさせ続けることでも、毎月の残業で何とか回させることでも、担当者しか分からない状態を放置することでもないはずです。
本当に社員のことを考えるのであれば、人が頑張り続けないと成り立たない仕事の形そのものを見直す必要があります。
新しい投資を、「何を削るか」だけで判断していませんか
もう一つ、現場でよく感じることがあります。新しい仕組みやサービスの話になると、「それを入れるなら、まず今の固定費を削らないと」「他の支出を止めないと無理だ」という方向に、すぐ話が進んでしまうことです。
もちろん、無駄な支出の見直しは大切です。ですが、ここで考えたいのは、今回の取り組みと、今ある固定費が本当に同じ土俵の話なのかということです。
たとえば、業務を整理し、確認や転記を減らし、情報共有しやすくし、既存の仕組みも活かしやすくする。そうした取り組みは、単なる「新しい支出」ではありません。
それによって現場の負荷が減り、残業が減り、引き継ぎがしやすくなるなら、それは会社を弱くするお金ではなく、会社を回りやすくするためのお金です。
業務効率化は、道具の前に「仕事の見直し」から始まります
「業務効率化を進めたい」そうおっしゃる会社は多いです。ただ、話を進めていくと、最終的には「今でも回っているから、このままでいい」という結論に戻ってしまうことがあります。ここに、大きな壁があります。
効率化とは、今のやり方を変えずに、何か便利なものを足すことではありません。
- そもそもこの確認は必要なのか
- なぜ同じことを何度も書いているのか
- 誰しか分からない判断がどこに残っているのか
- 残業しないと回らない工程はどこなのか
ここを見ないまま道具だけ入れても、効果は限られます。逆に、仕事の流れを整理したうえで必要なものを選べば、無理のない形で効率化は進められます。
社長の経験を、社長の代で終わらせないために
私は、紙そのものが悪いと言いたいわけではありません。これまで紙と現場力で会社を支えてきた経営者の努力には、本当に敬意があります。
ただ、そのやり方が社長にしか分からないまま残っていることは、別の問題です。
社長の頭の中にある判断基準。現場のベテランにしか分からない流れ。長年の経験で成り立っている仕事の回し方。それらは会社の財産です。ですが、整理されず、共有されず、引き継げる形になっていなければ、財産のままでは終わりません。社長が引退するとき、誰にも渡せない仕事になってしまいます。
デジタル化とは、見た目を新しくすることではありません。社長が築いてきた商売を、次の世代でも回せる形に整えることです。
都城の会社を、社長の代で終わらせないために
いま回っている。何とか回せている。社員が頑張ってくれている。それ自体は事実かもしれません。ですが、その状態がこの先も続くとは限りません。
本当に社員のことを思っての今のやり方なのか。本当に社内の力だけで抱え続けることが正解なのか。外に払う費用だけを見て、社内で積み上がっている負担を見落としていないか。新しい取り組みを、ただ「何を削るか」という発想だけで止めていないか。
一度、感覚ではなく、現場の負荷と仕事の流れから、自社の現状を見直してみてほしいのです。
- 黒字でも、引き継げなければ会社は続きません
- 外に払う費用だけでなく、社内で積み上がる残業代や手間も費用です
- デジタル化の本質は、引き継げる仕事の形をつくることです
都城には、良い技術、良いサービス、長く続いてほしい会社がたくさんあります。だからこそ私は、その会社が「社長しか分からないやり方」のまま終わってしまうのを見たくありません。
これまで会社を守ってきた判断力を、これから会社を残すための決断につなげる。今、求められているのは、その一歩ではないでしょうか。
まずは、御社の業務が「引き継げる形」になっているか、一度整理してみませんか。
mubik合同会社では、都城エリアの中小企業様向けに、ITツールを入れる前に、まず「仕事の流れを整理する」ことから始めるデジタル化支援を行っています。
「何を入れるか」ではなく、どこにムダがあり、どこが属人化し、どこが引き継ぎにくいのかを一緒に整理したうえで、無理のない進め方をご提案します。
よくある質問
小さな会社でも、まだデジタル化は早くないですか?
規模の問題というより、仕事が引き継げる形になっているかどうかが大切です。売上の大きさよりも、属人化や残業依存が続いていないかを見直すことが先です。
ツール導入より先にやるべきことはありますか?
あります。まずは仕事の流れを整理し、確認・転記・探し物・属人化がどこにあるかを見える化することが大切です。
外注費を増やすのが不安です
その感覚は自然です。ただし、社外に払う費用だけでなく、社内で積み上がる残業代や手間も含めて考える必要があります。比較すべきは「払うか払わないか」ではなく、「どちらが会社にとって持続的か」です。
出典
- 帝国データバンク 宮崎支店「宮崎県企業『休廃業・解散』動向調査(2024年)」
- 中小企業庁「2022年版 中小企業白書」第2部第3章第2節
